田んぼ
田んぼの一年を御紹介致します。作業では、田んぼの命さん達をなるべくあやめないために、奈良県桜井市の川口由一さんの自然農のやり方に沿っています。「耕さず、肥料を施さず、農薬や除草剤を用いず、草さんや虫さんを敵とせず」です。内容はほぼ鏡山悦子さんの『自然農・栽培の手引き』のとおりなので、そちらも御覧ください。
四月中旬から五月上旬 苗代作り
田んぼの中に苗代(なわしろ)を作ります。田んぼ一畝(ひとせ…30歩=30坪=約1アール=約100平方メートル)分の苗は、おおむね幅1メートル×長さ2.5メートル=2.5平方メートルの苗代で育てています。種籾(たねもみ)さんは、一畝につき水選(すいせん)したものを半合としています。
- まず、おうちで種籾さんを水選します。貯めておいた雨水を使っています。塩水選だと塩水の捨て場に困るので、雨水のみをたらいに入れて、その中に籾を入れ、浮いた籾を除きます。
- 沈んだ籾はざるにあげてお天道様にさっと乾かしていただきます。
- 田んぼへ行き、苗代の位置を決めます。あまり端に寄せてしまうと、田植えの時に苗代から植えるところまでの往復が増えてしまうので、なるべくまん中あたりにしています。場所を決めたら幅と長さをはかり、四隅に目印の棒を立てます。私の草薙の長さはちょうど1.25メートルなので、2.5メートルは草薙二本分となり、はかりやすいです。また、私の手を思いきり広げると、親指の先から小指の先までだいたい20センチメートルなので、その五倍で幅1メートルがはかれます。
- 目印の棒の中の苗代予定地に生えている草さんを、鋸鎌を用いて生え際で刈ります。刈った草さんは最後に使うので、まとめてとっておきます。前の年までに田んぼに戻した藁や、亡骸の層は、そっとどけて、同じくまとめてとっておきます。
- 【表土削り】前の年に落ちたかもしれない草の種さんをどけるために、表土を一、二センチだけ、鍬で削りとります。削った土は、田植え後の苗代じまいの時に戻すので、何ヶ所かに分けて、山にしておきます。
- 【鎮圧】削った後の表土を鍬で平らにします。特に、もぐらさんの穴がある場合は塞ぎます。そうしないと、種籾さんがそこに落ちてしまうので。
- 【籾振り】いよいよ種籾さんをまきます。一畝分で半合なので、数回に分けて少しずつ手に取り、軽く握って、指の間に隙間を作り、手を振りながらその隙間から少しずつ落としていきます。苗代のまわりを何周かして、むらがないようにまきます。このまき方次第で、次の籾離しの手間が大きく変わります。
- まいた種籾さんのうち、お互いにくっついている種籾さんや、近すぎる種籾さんを二、三センチメートルくらいに離します。私は勝手に「籾離し」と呼んでいます。種まきの時になるべくむらなくまければ、この作業は五分くらいで終わりますが、一ヶ所に数十粒くらいをごそっと落としてしまったりすると、とても時間がかかります。
- 【覆土、鎮圧】田んぼの土をシャベルの刃の長さくらい掘り、底の方の土を使って覆土します。種籾さんがしっかり隠れたら、鍬の刃を使ってしっかり鎮圧します。
- そうしたら、乾燥や鳥さんを防ぐために、藁や最初に刈った草さんをかけてお布団にします。これでできあがりです。
五月いっぱい 苗代草刈り
苗代作りの際に除ききれない草の種さんが発芽したら、そっと抜きます。ある程度育ってしまった場合は鋸鎌で、茎と根の境目で刈ります。とった草さんはその場に置いておき、苗代の乾燥を防いだり、少しずつ土に帰っていただいて、苗さんの栄養となっていただいたりします。
六月、田植え前 畔塗り(くろぬり)と大豆さんまき
- 田植えの前に畔塗りをします。畔を十センチメートルほど鍬で削り取り、その土を溝の中で練って、鍬の刃を使って畔を塗ります。水漏れを防いだり、水もちをよくしたりするための大事な作業です。
- 塗った直後に鍬の角を使って小さな穴を作り、そこに大豆さんの種を二粒ずつまきます。適度な湿り気があるため、覆土せずとも発芽します。また、田んぼの水気が常にあるため、多少の湿り気を好む大豆さんはとてもよく育ちます。畑と違って水やりの手間がかからず楽です。
六月いっぱい 田植え
- 植える場所の両端に、条(すじ)の目印の棒を四十センチメートルごとに立てます。植える間隔は条間(すじま)四十センチメートル、株間(かぶま)三十センチメートルとしています。坪あたり二十七株ほどの疎植です。
- 両端の棒を一本ずつ結ぶように紐を張り、その紐の真下に苗さんを三十センチメートルごとに植えます。一条目のみ、物差しではかり、二条目からは前の条を見ながら植えます。
- 植える時は、植える場所を鋸鎌でばってんに切り、そこを手で開いて、苗さんの根元にしっかり土をつけたまま、その穴に置き、開いた土を元に戻します。普通の田植えと比べて、かなり時間がかかります。時々気が遠くなりますが、少しずつ植えていきます。
- 六月いっぱいで終えて、七月に入ったらすぐ草刈りを始めた方が収量は多くなるように思うのですが、なんやかやで七月中旬まで田植えを続けてしまうことが多いです。
八月中旬頃まで 条間(すじま)草刈りと畦草刈り
四十センチメートル間隔で植えた条(すじ)の間の草さんを刈ります。一度に全ての条間を刈るのではなく、一条おきに刈ります。草さんを食べて生きている命さんや、草さんを住処としている命さん達の居場所をなくさないためです。これらの命さんが稲さんや草さんと一緒に育つことで、それらの命さんの落し物や亡骸が土に帰り、また命の一部となります。また、それらの命さんの呼吸によって、稲さんや草さんが光合成に必要な二酸化炭素が巡ります。
畦の草さんを刈る目的はいくつかあります。
- 畦を歩きやすくするため
- 畦に背の高い草さんが生えると、その根っこで土が少しだけゆるみ、水漏れしやすくなるため
- 大豆さんの生育のため
刈った草さんは田んぼに入れます。
十月中旬から終わるまで(時によっては年を越して二月ころまで) 稲刈り
- 十月中旬くらいから稲刈りを始めます。一度に三条ずつ、右利きの場合は右からひと株、ふた株、み株と刈って、左に置きます。品種やひと株ひと株の生育具合によって異なりますが、概ね三株から九株でひと束とします。
- ある程度刈ったら、束の上にぬらした藁を三、四本ずつ置いていきます。
- その藁を使って束ねます。
- 田んぼや時期によって竹で作った「れん」(または「はざ」または「おだ」)にかけて干したり、地面に並べて地干ししたりします。このあたりではからっかぜさんによって、稲刈り前に十分乾いている場合もあり、刈ってすぐに脱穀する場合もあります。
稲刈りと並行して 脱穀(だっこく)
足踏み脱穀機を使って脱穀します。穂がそのまま取れてしまったり、藁の破片がまざったりしますので、一輪車の上に大きな目のふるいを載せて、その上に脱穀したものをのせ、手でざらざらとこすり、籾とそれ以外のものに分けます。籾は袋に入れて持ち帰り、残りは田んぼにばらまきます。
稲刈りが終わったら 風選(ふうせん)
唐箕を使って籾とそれ以外の細かいものに分けます。何度やっても素晴らしく効率の良い、優れた道具だと思います。
随時 籾摺り(もみすり)
籾から籾殻を外し、中の玄米を取り出す作業です。ここだけ電気の力をお借りして、電動籾摺り機で籾摺りをします。使っている機械の特性上、籾が数パーセント残ります。
随時 揺動(ようどう)
十目のふるいでふるうと、小さな玄米は下に落ち、籾は浮いてきます。浮いてきた籾を取り分け、ふるいの底にたまった玄米を集めます。
随時 手選(てせん)
違う色のお米や、欠けているお米を目と手で取り分けます。特に赤米や紫黒米の糯米は、欠けていると断面が白くて目立つため、念入りに取り分けます。とっても時間がかかる作業です。
できあがり
これでできあがりです。自分の手で作業した分、とても愛おしく感じます。このお米を召し上がってくださるみなさまが、どうかお元気になりますように。