上州板倉で自然農田んぼの一年を御紹介致します。作業では、田んぼの命さん達をなるべくあやめないために、奈良県桜井市の川口由一さんの自然農のやり方に沿っています。「耕さず、肥料を施さず、農薬や除草剤を用いず、草さんや虫さんを敵とせず」です。内容はほぼ鏡山悦子さんの『自然農・栽培の手引き』のとおりなので、そちらも御覧ください。
田んぼの中に苗代(なわしろ)を作ります。田んぼ一畝(ひとせ…30歩=30坪=約1アール=約100平方メートル)分の苗は、おおむね幅1メートル×長さ2.5メートル=2.5平方メートルの苗代で育てています。種籾(たねもみ)さんは、一畝につき水選(すいせん)したものを半合としています。
まず、おうちで種籾さんを水選します。貯めておいた雨水を使っています。塩水選だと塩水の捨て場に困るので、雨水のみをたらいに入れて、その中に籾を入れ、浮いた籾を除きます。
沈んだ籾はざるにあげてお天道様にさっと乾かしていただきます。
目印の棒の中の苗代予定地に生えている草さんを、鋸鎌を用いて生え際で刈ります。刈った草さんは最後に使うので、まとめてとっておきます。前の年までに田んぼに戻した藁や、亡骸の層は、そっとどけて、同じくまとめてとっておきます。
【表土削り】前の年に落ちたかもしれない草の種さんをどけるために、表土を一、二センチだけ、鍬で削りとります。削った土は、田植え後の苗代じまいの時に戻すので、何ヶ所かに分けて、山にしておきます。
【鎮圧】削った後の表土を鍬で平らにします。特に、もぐらさんの穴がある場合は塞ぎます。そうしないと、種籾さんがそこに落ちてしまうので。
【籾振り】いよいよ種籾さんをまきます。一畝分で半合なので、数回に分けて少しずつ手に取り、軽く握って、指の間に隙間を作り、手を振りながらその隙間から少しずつ落としていきます。苗代のまわりを何周かして、むらがないようにまきます。このまき方次第で、次の籾離しの手間が大きく変わります。
まいた種籾さんのうち、お互いにくっついている種籾さんや、近すぎる種籾さんを二、三センチメートルくらいに離します。私は勝手に「籾離し」と呼んでいます。種まきの時になるべくむらなくまければ、この作業は五分くらいで終わりますが、一ヶ所に数十粒くらいをごそっと落としてしまったりすると、とても時間がかかります。
【覆土、鎮圧】田んぼの土をシャベルの刃の長さくらい掘り、底の方の土を使って覆土します。種籾さんがしっかり隠れたら、鍬の刃を使ってしっかり鎮圧します。
そうしたら、乾燥や鳥さんを防ぐために、藁や最初に刈った草さんをかけてお布団にします。これでできあがりです。
苗代作りの際に除ききれない草の種さんが発芽したら、そっと抜きます。ある程度育ってしまった場合は鋸鎌で、茎と根の境目で刈ります。とった草さんはその場に置いておき、苗代の乾燥を防いだり、少しずつ土に帰っていただいて、苗さんの栄養となっていただいたりします。
田植えの前に畔塗りをします。畔を十センチメートルほど鍬で削り取り、その土を溝の中で練って、鍬の刃を使って畔を塗ります。水漏れを防いだり、水もちをよくしたりするための大事な作業です。
塗った直後に鍬の角を使って小さな穴を作り、そこに大豆さんの種を二粒ずつまきます。適度な湿り気があるため、覆土せずとも発芽します。また、田んぼの水気が常にあるため、多少の湿り気を好む大豆さんはとてもよく育ちます。畑と違って水やりの手間がかからず楽です。四十センチメートル間隔で植えた条(すじ)の間の草さんを刈ります。一度に全ての条間を刈るのではなく、一条おきに刈ります。草さんを食べて生きている命さんや、草さんを住処としている命さん達の居場所をなくさないためです。これらの命さんが稲さんや草さんと一緒に育つことで、それらの命さんの落し物や亡骸が土に帰り、また命の一部となります。また、それらの命さんの呼吸によって、稲さんや草さんが光合成に必要な二酸化炭素が巡ります。
畦の草さんを刈る目的はいくつかあります。
刈った草さんは田んぼに入れます。
ある程度刈ったら、束の上にぬらした藁を三、四本ずつ置いていきます。
その藁を使って束ねます。足踏み脱穀機を使って脱穀します。穂がそのまま取れてしまったり、藁の破片がまざったりしますので、一輪車の上に大きな目のふるいを載せて、その上に脱穀したものをのせ、手でざらざらとこすり、籾とそれ以外のものに分けます。籾は袋に入れて持ち帰り、残りは田んぼにばらまきます。
唐箕を使って籾とそれ以外の細かいものに分けます。何度やっても素晴らしく効率の良い、優れた道具だと思います。
籾から籾殻を外し、中の玄米を取り出す作業です。ここだけ電気の力をお借りして、電動籾摺り機で籾摺りをします。使っている機械の特性上、籾が数パーセント残ります。
十目のふるいでふるうと、小さな玄米は下に落ち、籾は浮いてきます。浮いてきた籾を取り分け、ふるいの底にたまった玄米を集めます。
違う色のお米や、欠けているお米を目と手で取り分けます。特に赤米や紫黒米の糯米は、欠けていると断面が白くて目立つため、念入りに取り分けます。とっても時間がかかる作業です。
これでできあがりです。自分の手で作業した分、とても愛おしく感じます。このお米を召し上がってくださるみなさまが、どうかお元気になりますように。